組織運営のためには、社内での意思疎通(コミュニケーション)が円滑であることが重要です。
ABWは「組織を越えたつながりを生む“場”をつくる」ための有効なアプローチです。ABWを導入することで、チーム内に留まらず部署の壁を越えたコミュニケーションとコラボレーションが生まれ、新たな価値創出という効果も期待できます。
このコラムでは、出社時の偶発的なコミュニケーションを積極的に促すために、オフィス各所に施したい工夫についてご説明します。施設や設備にかかわるテーマなので、ABW導入前に設計する内容も含まれますが、導入後、施設や設備に大きく手を加えずとも取り入れられる工夫はたくさんあります。また、文末では社内イベントの設定例にも触れます。これらは、ABW運用開始後、施設や設備が思うように活用されていない場合の改善策にもなります。自社の状況に合う仕掛けを、一緒に探してみましょう。
偶発的な出会いとコミュニケーションを促すオフィス空間

オフィスでの垣根を超えた偶発的なコミュニケーションを促すための仕組みや工夫について、実例を交えながらご紹介します。これらは、テレワークでは味わえない、出社の価値を高めるための仕組みや工夫です。
ふと目に入る掲示物が会話のきっかけに

こちらは、皆が出社時に必ず立ち寄る個人ロッカーです。ロッカーには個人名だけでなく、顔写真や趣味など、親しみを持てる自己紹介の一言が添えられたメモが貼られているものもあります。お互いの顔と名前を覚えやすくなり、貼られた自己紹介が会話のきっかけになることもあるでしょう。
ロッカー前にソファを配置することで、打ち合わせはもちろん、出社時や外出前後のちょっとした時間に、ソファでくつろぎ、足腰を休ませながら、その場で出会った仲間との会話を楽しむこともできます。
挨拶ついでに話したくなる壁際の仕掛け
会議室前の壁際にこのような小さいテーブルを置いてみましょう。会議の前後の隙間時間や、すれ違ったときなど、ちょっとしたタイミングでの会話がしやすくなります。

マグネットスペースに施したいひと工夫
多くの従業員が行き交う、オフィス内のスクランブル交差点のようなマグネットスペース(磁石が引き寄せるように、自然と人が集まる場所)の配置を戦略的に有効活用することで、動線が頻繁に交わり、従業員同士の交流が活性化します。
マグネットスペースの具体例と活用方法
オフィスにおけるマグネットスペースとは、例えば「ごみ箱」「備品や消耗品置き場」「複合機周辺」「ロッカールーム」「給湯室」などが挙げられます。それぞれの施設設備を、フロア内の1か所にまとめて配置できないか検討してみましょう。これらは皆が必ず立ち寄る場所です。マグネットスペースを集約することで、従業員同士の交流の機会が自然と増えます。
社内掲示板で温かな雰囲気を醸成
現在は、チャットやグループウェアなど様々なオンラインツールもありますが、業務連絡以外でのコミュニケーションの活性化を図るためには、手作り感のある掲示物が効果的です。自然と情報が目に入りやすいリフレッシュスペースや通路などの壁面に社内掲示板を設置し、メッセージや写真を掲示する方法もあります。サンクスカード、顧客からの感謝の言葉、イベント時の写真などを取り上げるとよいでしょう。掲示期間と担当者を決め、継続した運用ができるようにしましょう。
カフェのようなリフレッシュスペース

従業員が休憩するためのリフレッシュスペースには、カジュアルなテーブルやソファなどを配置して、カフェのような空間を作るのがよいです。心が休まれば気軽な会話がしやすく、コミュニケーションが促されます。また、執務室とは違う雰囲気で、従業員同士の心的距離も縮まるでしょう。特に、リラックスできる環境においては創造的なアイデアや解決策が浮かびやすく、他部門との相乗効果やコラボレーションが多く生まれる場所となります。また、このような空間は、顧客対応の場としても利用できます。
より充実したミーティングを演出するオフィス空間

リモートでもミーティングはできます。しかし、初対面のメンバーを含むキックオフミーティングなどでは、実際に会って顔と顔を合わせることで、お互いをより深く知ることができます。一度でも対面で会話していれば、リモート会議でも発話しやすくなります。アイデア出しも、対面の方がより活発な意見が飛び交いやすいでしょう。この項目ではオフィスのミーティングスペースに焦点を当てます。
壁面を活用したホワイトボード

このミーティングスペースの壁面は、壁一面がすべて大きなホワイトボードになっています。アイデア出しのミーティング等で、スペースを気にせずたくさん書けます。そのため、内容を整理して共有もしやすく、活発な意見交換やアイデアが生まれやすくなります。また、壁一面のホワイトボードは、狭いスペースでもすっきり見える効果があります。
既存のオフィスにできる工夫として、壁に貼れるシートタイプのホワイトボードや、執務室のキャビネットや打合せスペースのパーティションをホワイトボード付き什器にしてみるのもお勧めです。
椅子が主役のミーティングスペース

このミーティングスペースには机がありません。パソコンから目と手を離して会話に集中し、簡易的なミーティングが行えます。丸椅子の底面は傾斜がついており、座面がゆらゆらと揺れます。適度な揺れは、リラックス効果と共に集中力アップの効果があります。雰囲気を変えて少人数でリラックスして話し合いたい、あるいは短時間で一つの議題について掘り下げた議論をしたい、そんな場面に適しています。
自然なコミュニケーションを促す社内イベント
アフターコロナの現在、飲み会等、飲食を伴うイベントを開催するかどうかは、テレワーク継続と同様、企業ごとに対応が異なるでしょう。需要自体の低下や、参加を強制できない時代の潮流も手伝い、従業員が一堂に集まるイベント開催に苦慮している社内担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、従業員同士の交流を促すために活用したい、社内イベント開催の手法をご紹介します。なお、ご紹介する社内イベントは、任意参加とするなら「休憩時間」等に実施することができますが、参加を必須とする場合は「労働時間」となり、別途休憩時間等が必要になる点に注意が必要です。その点を明確にし、周知したうえで実施しましょう。
ランチ会の開催
ランチ会はプライベートな時間を犠牲にせず、お酒を飲まないで済む等の理由から夜の飲み会よりは気軽に参加でき、皆が集まりやすいといわれています。
座席の配置はランダムにグループを作り、なるべく違う部署のメンバーが会話できるようにするとよいでしょう。
事前に決めたテーマ(趣味・週末の出来事など)で行う自己紹介から始めると、会話が途切れる心配がなく、相互理解も深まり、チームビルディングにつながります。
歓送迎会や季節のイベントとして行うのであれば、景品を準備してミニゲーム(じゃんけん・クイズなど)をするのもよいでしょう。全体として場が盛り上がり、雰囲気が和みます。
集まって行う軽作業
一例として、オフィスの清掃をご紹介します。皆が使う場所なので、全員に呼びかけて勤務時間内に実施します。フリーアドレス席であっても、業務中に話すのは少し気が引けてしまうかもしれません。しかし、手を動かしながらの会話であれば、気兼ねなく雑談ができます。
また、例えば軽作業日にランチ会も組み合わせて実施するなど、複数の社内イベントを同一日に実施するのもよいでしょう。これらを定期的に行うことで、従業員同士の交流の輪が広がります。
まとめ~会って話すことを後押しするオフィスづくり~

出社でなくては得られない体験として、対面でのコミュニケーションが真っ先に挙げられます。たまたまオフィス内で出会ったことで生まれる、ちょっとした会話や雑談、相談なども、出社するからこそ得られる付加価値です。せっかく出社したのに誰とも話さず、個別ブースで黙々と仕事をして一日が終わるのであれば、出社の付加価値は失われます。「わざわざ時間と労力をかけて出勤しなくても在宅勤務でよいのではないか」という結論に至ってしまいます。
ABWは単にオフィスのレイアウトを変更するだけではなく、働き方の革新を促進する重要な要素です。そのため、ABWを効果的に運用していくためには、ただオフィスを整備するだけでなく、従業員が出社したくなるような空間づくりも重要です。オフィス環境を整えるだけではなく、使い勝手や運用ルールの見直しを行い、改善する必要があります。
今回のコラムで、皆様にとって何か得るヒントはございましたか?ABW導入前後、よりよい運用の参考に、本コンテンツをお役立てください。
以上